お客様事例:パナソニックコネクトにおける言語AIの活用
記事化したものです。
パナソニック コネクト株式会社について
パナソニック コネクト株式会社は、パナソニックグループにおいて、B2Bソリューション事業成長の中核を担い、顧客起点でお客様の「現場」に貢献する新しいソリューションを提供しています。
パナソニック コネクト株式会社 技術研究開発本部 知能システム研究所 知能システム研究部 シニアマネージャー、AI 技術領域 エバンジェリスト 大坪 紹二 氏 DeepLジャパン合同会社 日本法人代表 白井崇顕
大坪様の今の会社における役割や守備範囲をご説明いただ けますでしょうか?
大坪:私はパナソニックコネクトで研究開発部門に属しております。その中でシニアマネージャーとして日々様々な現場やエンタープライズでもお使いいただけるようAIの研究開発を進めております。我々の技術やAIの取り組みなどを他のお客様にもお伝えするエバンジェリストも担当しております。
パナソニックコネクト株式会社は、パナソニックグループの一社で、元々はパナソニック株式会社の中で、BtoB向けのソリューションを担当していた社内カンパニーが、ホールディングス化に伴い、法人格として独立した会社です。特にお客様は、法人様、また官公庁様が対象となります。
我々のパーパスは、現場から社会を動かし、未来へつなぐということです。元々我々はハードウェアエッジデバイスからビジネスを始めており、様々なお客様の現場に入らせていただいています。ただし、実際お客様が求めていたのは、ハードウェアではなく、課題を解決することでした。サプライチェーン、公共サービス、生活インフラ、エンターテイメントといったお客様の領域に対して、元々はデバイス向けのテクノロジーや、プロジェクターの ようなエッジデバイスそのもの、そしてその上のソフトウェアを提供していましたが、それだけではなく、お客様の業務プロセスを理解をするコンサルティング、そしてそれらをサービスとして提供しています。これらを包括して、お客様に様々な新しいソリューションも提供していくということを進めているのがパナソニックコネクトです。
私は技術研究開発本部を担当しています。いわゆるパソコンの中、クラウドの中といったデジタル領域と、我々が生きているこのフィジカルな世界で人間が見聞きするようなセンシング、それを考えるAIとシミュレーション、そしてそれを現場に対してサービスするロボティクス、これらの技術領域を中心にした研究開発をしています。また、2021年に買収したアメリカのブルーヨンダー社が提供しているようなサプライチェーンの基幹システムのソフトウェアサービスと、実際の現場の情報を組み合わせることで、さらにサービス提供していくといったスキームも進めております。
言語に関してどういった課題を感じられているかお話しいただけますでしょうか?
我々パナソニックコネクトも、お客様はグローバルにおりまして、先ほど申し上げた、ブルーヨンダー社の買収によって、さらに海外のお客様も増えてきました。
また、CEOが現CEOの樋口に変わってから、経営改革、社内行政改革を進めています。我々もコネクトAIという生成AIの導入をニュースとしてあげさせて頂いていますが、それだけでなく、研究開発そのもののやり方を変えるということで、様々な外部の有識者との連携もあります。実際私も昨年から上司がドイツ人になって常にドイツにいる上司とコミュニケーションをしながら、次の技術戦略、AI戦略を検討するという仕事をしています。また私のメンバーの研究者もアフリカや中国からのメンバーなど、どんどん海外のメンバーが増えてきています。
その中で当然コミュニケーションの課題は日々ございます。特に研究開発部門のマネージメントという点では、いかに研究者のモチベーションを上げるかといったことが重要です。研究というものは、そう簡単 にはうまくはいかず、十個やって一個当たるか当たらないかといった分野なので、失敗することもたくさんあります。その中で、上司からの指示の意図を適切にメンバーに伝える必要があります。方針を変える時などは適切に伝えないと、単語一つだけで大きな認識違いによって不幸が生まれることもあります。
また、我々は研究部門で、特にAIの研究領域は日々進化が激しいです。一週間前の最新技術が、一週間後にはすぐ陳腐化し、また違う技術ができるという世界です。日々たくさんの論文を読まないといけないですし、学会発表もしていかなくてはいけません。その中で、英語での読み書きがスピードを遅める非常に大きな要因だったということがございました。
そういった言語の課題がある中でDeepL Proの翻訳機能をお使いいただいているかと思いますが、どういった変化があったかを教えていただけますでしょうか。
実際DeepLを使わせていただいて、本当に世界が変わったと思っています。大きく二つの価値があります。使われたことがある方は実感されているかと思いますが、本当に日本語を使っているかのように自然に翻訳できるというのがあります。従来の無償サービスなどですと、やはり英語から日本語にした際の違和感や、逆変換をした際の違和感があったのですが、それがほぼないといったところが1つです。もう1つはスピードになります。変換のスピードはもちろん速いのですが、様々なユーザーインターフェースの工夫がされているという点もあります。例えばコントロールCCというショートカットを打つだけで選択したテキストがすぐに変換できるなど、息を吸うような形で異なる言語とのコミュニケーションが可能になりました。
私自身、上司とのミスコミュニケーションを防ぐためにブラウザのWikiで、コミュニケーションを行っています。まず日本語で文章を書くのですが、ブラウザの拡張 機能でDeepLのツールを入れているので、日本語で書いた文章がそのまま英語に翻訳できます。上司もDeepLのアカウントを持っているので、英語で見ているかドイツ語で見ているかわからないですが、Teamsのブラウザーの画面や、Wikiの画面もそのままそれぞれの言語で見ることができます。本当に息を吸うような形で多言語のコミュニケーションができるというのは大きな変化になります。
パナソニックコネクト様には先行してDeepL Write Proを使っていただいています。実際どういう使い方をされているのかをお伝えいただけますでしょうか?
実際に英語を書く機会は論文が多いです。論文を書くメンバーとも一緒にDeepL Write Proの評価をさせていただいていますが、実際使えるという一言がまず出てきています。 従来どうやって論文を書いていたかと言いますと、何かしら日本語を書いてから、それを英語にするという方が多いです。その英語を有人、有償の校正サービスに依頼して、実際の国際論文に出すというプロセスがよくあるパターンでした。その結果を見ると、おおよそ1ページに2、3箇所の修正がある程度だったのですが、校正サービスを通した文章をDeepL Writeにもかけてみると、ここはこう直した方がいいといった箇所が有償の校正サービスの5から6倍ぐらい出てきています。そこでより良い表現の選択肢が提示されるのは、目に見える効果だと感じています。
また、一般的な生成AIのサービスを使って海外論文用に翻訳をして校正をするというメンバーもいました。彼とDeepL Writeの評価をした時に言っていたのは、一般的な生成AIを 使うと、少しニュアンスを変えただけで、前回変換させたものとは全く違うものに変わってしまい、修正箇所の変化、対応関係が分からなくなり、この制御がしづらいといったところが問題だということでした。DeepL Writeで変換をかけていくと、完全に対応関係が明確に分かり、狙い通りの修正ポイントが出てきます。この辺りはやはり翻訳に特化しているDeepL Writeの良い点ではないかと話をしています。
言語の壁がなくなった先にどのような世界があると考えられるかご共有を頂けますでしょうか?
我々も、生成AIを含めて研究開発しており、今まさに技術トレンドにも非常に関心を持って調査、研究をしているのですが、いくつかの進化の可能性が近い将来あると思います。 一つは、もう今年度中ぐらいだと思いますが、論理的な推論ができるようになってくるかと思います。なんとなく結果が出るのではなくて、論理性が高まった結果が出る。これは近い将来の話かと思います。 二つ目としては、パーソナライズがあるかと思います。それぞれの言いたいことや伝えたいニュアンスに対応できるようになって、かつデータもちゃんとセキュリティで守られていく。このパーソナライズとセキュリティといったところの両立が、おそらく技術進化としてあるのではないかと思います。 また、マルチモーダル化といったところも出てくる中で、マルチモーダルでさらに出てくるのがコンテキストです。どういう状態でこの変換をしようとしているのか解釈した上で適切に表現されていくといったところが、もう数年のうちに進化としてあるのではと考えています。 ただ、やはり人間の頭の中で思っている暗黙的なものやカルチャーによって違う概念、例えばオノマトペと言われるような、「はっとする」「すっと終わる」といったニュアンスまで、異なる言語やカルチャーの方同士でコミュニケーションできるようになると、本当の意味でダイバーシティを超えて、直接コミュニケーションできるようになるかと思います。まさに言語の壁を超えた先として、価値観だったり、カルチャー、こういったものが次にあるのではないかと思っており、これは本当に楽しみにしたいなと思っています。ここは技術的には非常に難しいと思いますが、是非そこまで進んで頂きたいなと思っているところです。
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